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技術コラム

【粉体】Vol.41 ブラジルナッツ効果

2025年09月02日

はじめに

コンビニでミックスナッツを買って開けたとき、なぜか大きなナッツが上に集まっていることに気づいたことはありませんか?この現象には実は「ブラジルナッツ効果」という名前がついており、粉体工学における重要な現象の一つです。

今回は、この身近でありながら奥深いブラジルナッツ効果について、その仕組みから産業応用まで詳しく解説します。


ブラジルナッツ効果とは

ブラジルナッツ効果とは、異なるサイズの粒子が混ざった状態で振動を加えると、サイズの大きな粒子が表面に浮き上がってくる現象のことです。

最も分かりやすい例が、先ほど挙げたコンビニのミックスナッツ袋です。購入時には均等に混ざっているように見えるナッツも、輸送中の振動により以下のような状態になります。

特に上層部は大きなアーモンドやカシューナッツが集まり、下層部には小さなピーナッツや細かい破片が沈みます。
食べ進めていくうちに小さなナッツばかりが袋の底に残るのは、このブラジルナッツ効果によるものなのです。

ちなみに、この現象の名前は1987年にPhysical Review Letters誌に掲載された「Why the Brazil nuts are on top」という論文タイトルに由来しているそうです。

参考文献:https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.58.1038


メカニズムの説明

この現象は「振動」と「粒のサイズの違い」によって起こるとされています。

振動によって全体が流動状態になり、個々の粒が動きやすくなります。

粒のサイズの違いによって、小さい粒子が隙間を通って下に落ちる一方、サイズの大きい粒子が周囲の粒に支えられることで下に落ちにくくなります。

これによって相対的に小さな粒子が下へ、大きな粒が上へ押し上げられるのです。
この相対的な動きの違いにより、時間の経過と共に大きな粒子が上層部へ、小さな粒子が下層部へ分かれていきます。


iGRAFによるシミュレーション

実際にiGRAFを用いてブラジルナッツ効果のシミュレーションを行いました。

粒子径0.8mmと粒子径4mmのサイズの違う二種類の粉体を空洞を持つ箱の中に入れ、箱を横方向に振動(振幅1.2mm、周波数12Hz)させます。

以下の動画は左から順に、上面、横、底面から見たときの動画です。



シミュレーション開始から約3秒後、上面視点から観察すると、直径4.0mmの大きな粒子が明確に上層部に浮き上がってくる様子が確認でき、ブラジルナッツ効果を再現することができました。


産業・日常生活での応用例

ブラジルナッツ効果は「振動による粒子分離」として、様々な分野で観察され、時には積極的に活用されています。


農業・土木分野
収穫したての穀物を籠に入れて振ることで、大きな粒と小さな粒を簡単に分離することができます。これは、現代の機械化された選別システムの原型とも言えます。また、畑などでも大きい石が上にあがってくる現象が観測されるそうです。地面も車やトラクターが通るたびに微弱に振動しているからでしょうか。

土木工事の現場でも同様に、重機による掘削作業を行うと、地中に埋まっていた大きな石や岩が表面に浮き上がってくる現象がよく観察されるそうです。


製造業
製造業では、ブラジルナッツ効果を積極的に活用した分離技術が数多く採用されています。例えばプラスチックリサイクルの分野では、異なるサイズの樹脂ペレットを振動により効率的に分類し、リサイクル材料の品質向上を図っています。

またブラジルナッツ効果の理解は、製品設計や包装設計において極めて重要です。
特に食品や化粧品、医薬品など、内容物の均一性が品質に直結する製品では、輸送振動による分離を予測し、適切な対策を講じることが消費者満足度の向上につながっているそうです。


まとめ

ブラジルナッツ効果は、私たちの身近にある現象でありながら、粉体工学における重要な研究テーマです。完全な解明には至っていないものの、そのメカニズムの理解は産業応用において重要な意味を持ちます。
日常生活の何気ない現象に科学的な背景があることを知ると、身の回りの世界がより興味深く感じられるのではないでしょうか。今度ミックスナッツを食べるときは、ぜひこのブラジルナッツ効果を思い出してみてください。

[From A.Kokuryo]


参考文献

・Rosato, A., et al. (1987). "Why the Brazil nuts are on top: Size segregation of particulate matter by shaking." Physical Review Letters, 58(10), 1038-1040.
・Duran, J. (2002). 粉粒体の物理学 原著修訂版: 砂と粉と粒子の世界への誘い (H. Nakanishi & K. Okumura, Trans.). 吉岡書店.


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