実際に存在する粉体を細かく見ていくと、非球形の材料も少なくありません。そういった粉体をシミュレーションで扱うためにはいくつか方法があります。中でも、多くの粉体を扱う場合に適した方法である【回転抵抗モデル】による非球形の模擬方法について今回は解説していきます!
COLUMN
技術コラム
【粉体】Vol31.粉体編:シカクいリュウシをマルくする。(非球形の取り扱い①)
非球形と計算負荷
粉体のシミュレーションにおいて、非球形を扱うモデルは多数存在しています。非球形をそのまま取り扱うモデル、粒子を連結させて類似の形状を作成するモデルなどです。
このような非球形のモデルの強みとしては、形状をそのまま扱えるため、解析の精度が向上する傾向があります。一方で、精緻に計算しようとすればするほど計算負荷が重くなってしまいます。。。原因としては、「形状を認識する」という操作です。粉体同士の接触を考えてみても、どの方向を向いているのか、各方向でどの程度の径になっているかなどなど、考える要素が様々です。
こういった弱点を克服しつつ、非球形の効果を考慮するモデルが回転抵抗モデルとなります。この回転抵抗モデルでは、球形のまま扱いつつ転がりにくい力を入れることにより非球形性を模擬することができます。球形・非球形の両者で同様の転がりにくさに設定できれば、類似の挙動を示す粉体として球形の物体を活用することができます!
回転抵抗モデルの考え方
回転抵抗モデルで非球形を模擬できることをお伝えしましたが、どのように模擬しているのでしょうか?
基本的には、球が【転がりにくい方向にトルクを加える】モデルとなっています。例えば、坂道を球が転がっている場合、トルクがはたらいていないとどんどん転がっていきますが、回転抵抗モデルを適用している場合はブレーキがかかるイメージで転がり速度が抑えられます。この抵抗により非球形での転がりにくさを模擬しています。加えて、係数を用いることにより、転がりにくさを調整することもできるようになっています。
この回転抵抗を用いることにより、粉体の流動性を表現することができます。非球形材料が多い場合は粉体としての流動性が悪くなる傾向があります。このような効果を回転抵抗で模擬し、同挙動を示す粉体としてシミュレーションで活用していきます。
回転抵抗モデルによる差を見た例を下記にお示しします。上部から粉体を落下させ、安息角を取得している例となります。左側が回転抵抗なし、右側が回転抵抗ありの条件となります。動画の通り、安息角の違い・流動性の違いを模擬できていることが分かるかと思います。
さいごに
今回は非球形の取り扱いモデルの1つである回転抵抗モデルについて解説しました。方程式としては回転方向の運動方程式に回転抵抗の要素が加わる形になります(詳細はこちらの記事をご覧ください。)。比較的簡単に用いることができるモデルとなりますので、お手元に粉体シミュレーションソフトがある方は一度試してみてはいかがでしょうか。
[From S. Kato]
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