真空断熱タンブラーは、通常のタンブラーと比較して長時間適温に保温することができます。身近な真空断熱タンブラーですが、その保温性能はどのように実現されているのでしょうか。
今回の流体コラムでは、熱流体解析ソフトSimcenter FLOEFDを使用し、真空断熱タンブラーの熱伝導解析を行った事例を紹介いたします。
COLUMN
技術コラム
【流体】熱伝導解析を用いた真空断熱タンブラーの保温性能の検証
はじめに
熱の伝わり方には熱伝導、対流、ふく射の3種類があります。熱伝導と対流は熱を伝える物質が必要ですが、ふく射には必要ありません。これは、ふく射では電磁波で熱が伝わるためです。
真空では物質が存在しないため、ふく射のみで伝熱することになります。
解析条件
真空断熱タンブラーと真空断熱ではない普通のタンブラーを対象とし、水の保温性能を比較しました。
■ 解析モデル
図1にモデルを示します。普通のタンブラーでは真空部分をステンレスとしました。簡略化のために、水の部分には水の物性値を設定した固体材料を割り当て、熱伝導解析のみ行いました。

■ 解析条件の設定
表1に解析条件を示します。
解析結果
図2に水の平均温度の時刻歴変化を、図3,4に60分経過時の各タンブラーの断面温度と、最大温度の箇所を示します。



図2から、60分後で比較すると、水の温度は赤線の真空断熱タンブラーで60℃、青線の普通のタンブラーで35℃程度となりました。真空断熱タンブラーでの温度変化は30℃、普通のタンブラーでの温度変化は55℃程度であることから、保温性能に2倍程度の差があることが分かります。
図3,4より、真空断熱タンブラーの断面温度は、内側のステンレス層と外側のステンレス層で差があります。一方、普通のタンブラーの断面温度は、内側、中間、外側のステンレス層で差がなく連続しています。
冒頭で説明したように、真空層ではふく射のみで伝熱します。真空断熱タンブラーと普通のタンブラーの比較から、保温には真空層を設けて熱伝導と対流を断熱することが効果的だと分かります。
まとめ
今回の解析事例では、真空断熱タンブラーの熱流体解析を紹介いたしました。真空断熱タンブラーは真空層で断熱できているため、本モデルでは普通のタンブラーと比較して保温性能が2倍程度あることが分かりました。
[From K. Sugahara]
備考
解析タイプ | 非定常熱伝導、ふく射 |
---|---|
境界条件 | タンブラー表面と水表面の熱伝達率 10 W/(m^2・K)、20℃ |
タンブラーの固体材料 | ステンレススチール321 |
タンブラーの放射率 | 0.074 |
初期温度 | ステンレス:20℃ 水:90℃ |
使用ソフト | Simcenter FLOEFD |
---|---|
計算時間 | 15 min |
使用CPU | Intel(R) Xeon(R) Platinum 8260 CPU @ 2.40GHz |
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