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【粉体】Vol10. DEMを用いた粉のシミュレーション:はたらく力 ファンデルワールス力

2022年03月17日

粉へはたらく力

前回は粉のシミュレーション手法(DEM : Discrete element method)で考慮するはたらく力、その中でも接触力についてご紹介しました。接触力は【法線方向】の接触力と【接線方向】の接触力を合わせた力でした。また法線方向・接線方向それぞれで粒子の重なり量により計算される【静的接触力】と速度差により計算される【動的接触力】に分けて考えられていました。つまり、法線方向・接線方向の2パターンと静的・動的の2パターンの掛け合わせ、計4パターンの力を合わせたものが接触力として計算されていました。

粉の挙動を考えるときには接触力以外にも考えるべき力があります。中でも粉同士や粉と壁の間でお互いに力を及ぼしあい、付着しようとする【付着力】は粉を扱う上で重要な要素の一つだと思います。今回と次回の2回で付着力について解説していこうと思います。今回は、そんな付着力の中でも【ファンデルワールス力】に焦点を当てて解説していきます!

ファンデルワールス力

ファンデルワールス力は付着力の一つで、原子や分子間に生じる力です。原子や分子内の電気的な偏り(電気双極子)に起因した力となるため、粒子間に常にはたらく力です。

・ファンデルワールス力の大きさ
ファンデルワールス力の大きさとしては以下のような形であらわされています。



ここで単位ベクトルというものが入っていますが、これは方向を示すものであり大きさには関与しません。したがって、ファンデルワールス力の大きさは【粒子径】・【粒子表面間距離】および【ハマカー定数】により決まるということが分かります。



このような形で計算されるファンデルワールス力は実際にどの程度の力なのでしょうか。他の力と大きさを比較したグラフ(*)を以下に示します。



このグラフから、1μm程度より小さい粒子についてはファンデルワールス力や液架橋力の影響が大きく、対して大きい粒子ではクーロン力等の電気的な力の影響が大きいことが分かります。このように、ファンデルワールス力は10-6m(マイクロメートル)や10-9m(ナノメートル)程度の小さな粒子を対象とするときに考慮するべき力、大きな粒子を対象とするときには影響が小さいので考慮しなくてもいい力ということになります。

また、今回ファンデルワールス力の式の導出については省略していますが、概要としては

1原子・分子に着目して電気的な偏りによる力を求める
2粉粒体を構成する体積分だけ足し合わせる

という方法により求められています。ご興味がありましたら検索してみてください。

・ハマカー定数
ファンデルワールス力を求めるための3要素のうち、粒子径と粒子表面間距離はイメージしやすいと思います。では、残りの一つ、ハマカー定数とは何なのか?
ハマカー定数とはファンデルワールス力の大きさを特徴づける値であり、物体の組成や表面状態、形状により決定する値です。したがって、一概にハマカー定数の値を決定することはできないのですが、一般的には10-21~10-19の値となることが多いです。参考として材料ごとの目安の値を表にまとめました(化学工学便覧より)。

材料 ハマカー定数[J]



空気中にある場合
酸・塩化物 6~15×10-20
金属 15~50×10-20
炭化水素系 4~10×10-20



水中にある場合
酸・塩化物 0.5~5×10-20
金属 5~30×10-20
炭化水素系 0.3~1×10-20


ちょこっとメモ:ヤモリが壁に張り付く力は?

民家の周辺に生息しているヤモリ。皆さんもどこかでヤモリを見たことがあるのではないでしょうか。彼らを見たとき、壁や天井に張り付いていませんでしたか?
実はヤモリが壁や天井に張り付くことができる要因もファンデルワールス力なのです。ヤモリの足先には細かい毛のようなものが生えており、その毛と壁との間のファンデルワールス力により張り付いています。

「毛で張り付く?」と思う方も多いと思いますが、そこはファンデルワールス力の性質を踏まえて考えてみようと思います。ヤモリの足先の毛は10-6m(マイクロメートル)程度であり、さらにその先端は10-9m(ナノメートル)程度の太さに枝分かれしているそうです。解説の中でもお話した通り、ファンデルワールス力は働くものが小さいほど大きな影響を及ぼすことから、細かい毛によりファンデルワールス力の影響が大きくなります。それに加えて力がはたらく点が多く存在しているということから壁に張り付くことができているのです。



さいごに

今回は付着力の中でもファンデルワールス力について解説しました。ファンデルワールス力は10-6m(マイクロメートル)や10-9m(ナノメートル)程度の小さな粒子を対象とするときに考慮するべき力であり、周囲環境や粒子の表面状態によってハマカー定数が決定されるというものでした。
次回は付着力の第2弾として液架橋力について解説します。お楽しみに!

[From S. Kato]

【参考資料】
(*)増田、「粉体粒子の付着力・凝集力」、電子写真学会誌 第36巻 第3号(1997)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/isjepj/36/3/36_3_169/_pdf

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