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【構造】画像計測と構造シミュレーションを融合するデータ同化技術(第二回)

2022年01月20日

はじめに

ICT技術の発達、IoT技術の普及により、大量のデータがセンシングできるようになってきています。また、計算機の性能向上により、これまで難しかったシミュレーションを用いたデジタルツインの構築も現実的になってきました。しかし一方で、シミュレーションとデータの間を埋める方法論はまだ十分に整備されていない状況です。本講では、データ同化と呼ばれる計測データとシミュレーションを融合する技術に関する取り組みをご紹介いたします。

画像計測と構造シミュレーションのデータ同化技術

構造計画研究所では、現実を反映したシミュレーションをデータ同化技術により実現しようとしています。前回の記事では、データ同化で利用する画像計測技術(デジタル画像相関法)の結果をご紹介しました。今回はデータ同化の方法をご紹介したいと思います。

事例紹介:材料パラメータと力学的境界条件の同時推定

単軸引張試験にデータ同化技術を適用した事例をご紹介します。ここでは、既存手法によって材料パラメータを計測した対象物に対してデータ同化を適用することで、データ同化手法の適用性評価をしています。本内容は計算力学講演会2019で発表した内容の一部です※1。

データ同化の方法と結果

データ同化のアルゴリズムとして、ensemble Kalman filter (EnKF) を用いました。EnKFは気象分野をはじめ多くのシミュレーションに活用されている手法です。計算方法の詳細は参考文献※2、※3をご参照ください。本事例では、EnKFを用いてDICで計測した表面の変形データから材料パラメータ(ヤング率・ポアソン比)と、荷重が加わるたびに変化する試験体上部の力学的境界条件を逐次的に修正した結果をご紹介します。

結果1. 左右対称な荷重を想定したモデルのデータ同化結果

今回の記事では、ひずみが左右非対称になってしまった前述の試験結果を用いて、データ同化を実施した例を示します。はじめに荷重分布を推定しない場合の結果を示し、次に荷重分布を推定した場合の結果を説明します。



本事例では試験片の材料パラメータは事前に計測しています。まず、この材料パラメータに誤差を与えて構造シミュレーションの計算をスタートし、DICの情報からこの誤差を修正できるかどうかを検証します。(もちろん、事前の材料パラメータの計測結果にも誤差がありますので、この値が真の値とは言えない点には注意が必要です。)

図中右上に材料パラメータと力学的境界条件の設定を示します。ヤング率とポアソン比の事前の計測結果に対して、それぞれ誤差として+40%の値を設定して構造シミュレーションを開始しました。
図中の一番左は、データ同化を実施せずに誤差を与えた状態で計算したひずみ分布(FEM 初期誤差あり)です。その右はDICで計測されたひずみ分布です。それぞれ同一の荷重時の結果で比較しています。シミュレーションでは剛性を高く設定しているため、DICの計測結果に対して全体的にひずみが小さいことがわかります。DIC結果の右は、データ同化によりDICの計測結果を用いて構造シミュレーションのパラメータを修正した結果(同化結果 等分布荷重)です。ただし、前述の通り境界条件は推定せず、等分布な荷重として計算しています。

これら3つの結果を比較すると、誤差を与えた構造シミュレーションに対して、データ同化結果はひずみの平均値としては似た結果が得られていますが、荷重を等分布に固定していたため、DICの結果に見られるような左右非対称なひずみ分布は当然ながら再現されていないことがわかります。

次はパラメータの修正履歴を確認してみましょう。図中右の縦に2つ並んだグラフは、入力荷重の増加に対するヤング率とポアソン比の推定結果の履歴を示しています。 赤線は事前に計測しておいたそれぞれの値を示し、黒点がEnKFで得られるアンサンブル平均値という値です。ここでは、これらの黒点をそのタイミングでの推定結果と考えます。

ヤング率とポアソン比のそれぞれの推定結果を見ると、ポアソン比は比較的良好な推定結果を得られているのに対し、ヤング率の推定結果は事前の計測結果に対して19%程度高く推定されています。これは、実際の実験では荷重が不均一であると思われるのに対し、今回のデータ同化の条件では等分布な荷重しか計算できないため、この計算モデルの誤差がヤング率の推定結果に影響を与えていると考えられます。

今回は、力学的境界条件を推定しない場合のデータ同化結果についてご紹介しました。次回は力学的境界条件を同時推定する場合の結果をご紹介いたします。


参考文献
※1. デジタル画像相関法を用いた逐次データ同化による材料パラメータと境界条件推定, 綿引 壮真, 佐々木健吾, 計算力学講演会講演論文集2019.32 巻, 2019.
※2. データ同化入門―次世代のシミュレーション技術―, 樋口 知之(編著), 朝倉書店, 2011.
※3. データ同化流体科学―流動現象のデジタルツイン―, 大林 茂ら, 共立出版, 2021.


[From S. Watahiki]

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