はじめに
ICT技術の発達、IoT技術の普及により、大量のデータがセンシングできるようになってきています。また、計算機の性能向上により、これまで難しかったシミュレーションを用いたデジタルツインの構築も現実的になってきました。しかし一方で、シミュレーションとデータの間を埋める方法論はまだ十分に整備されていない状況です。本講では、データ同化と呼ばれる計測データとシミュレーションを融合する技術に関する取り組みをご紹介いたします。
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ICT技術の発達、IoT技術の普及により、大量のデータがセンシングできるようになってきています。また、計算機の性能向上により、これまで難しかったシミュレーションを用いたデジタルツインの構築も現実的になってきました。しかし一方で、シミュレーションとデータの間を埋める方法論はまだ十分に整備されていない状況です。本講では、データ同化と呼ばれる計測データとシミュレーションを融合する技術に関する取り組みをご紹介いたします。
構造計画研究所では、現実を反映したシミュレーションをデータ同化技術により実現しようとしています。今回はその中でも、2021/11/4のコラムでご紹介したデジタル画像相関法(DIC)と構造シミュレーションを組み合わせた事例をご紹介します。
(【構造】CAE担当者にも嬉しい実験計測手法:デジタル画像相関法(DIC)のご紹介 https://www.sbd.jp/column/kozo_dic.html)
DICを用いて変形する物体を撮影した画像を解析することで、物体表面のひずみや変位などの物理量を面的に取得することができます。
(構造計画研究所 DIC計測✕CAE解析サービス https://dic.kke.co.jp)
これから4回程度に分けて、ベンチマークとして単軸引張試験にデータ同化技術を適用した事例をご紹介していければと思います。まず、今回は試験方法とDICの結果についてご説明いたします。
この事例では、既存手法によって材料パラメータを計測した対象物に対してデータ同化を適用することで、データ同化手法の適用性評価をしていきます。本内容は計算力学講演会2019で発表した内容の一部です※1
ダンベル型試験片を万能試験機で引っ張り、その様子を同期した2台のCCDカメラでステレオ撮影しました。下図に試験の様子と試験体の情報を示します。ステレオカメラとDIC分析にはgom社のARAMISシステムを使用しています。試験機荷重はカメラの撮影タイミングと同期してサンプリングしました。手法の汎用性を確認するためにアルミ合金、鉄鋼、ポリカーボネート樹脂の計3種類の試験片で実験を行いました。試験体表面には、DIC分析のためにスプレーを用いて白黒のランダムな模様を塗布しています。
結果の代表例として、アルミ合金 (材質:A5052) の結果を下図に示します。カラーコンターは鉛直方向のひずみの分布です。
右図は計測領域のカラーコンターだけを表示しており、左図はステレオカメラのうち片方のカメラの撮影画像にカラーコンターを重ねたものを表示しています。試験体中央のくびれ部のカラーコンターを見てみると、試験体左側のひずみが少し大きいことがわかります。 これは、本来は試験条件として左右均等に加わっているべき荷重が不均一になってしまっていることを示唆しています。このような、この荷重の不均一性は、試験体を試験機に設置する際の人間の作業精度や、試験体を掴んでいるチャック部分の滑りなど様々な要因が考えられます。通常の単軸引張試験ではこのような実験時に生じる不確かさを把握することは難しいでしょう。例えば、ひずみゲージ等の貼り付けた局所的な箇所を計測するセンサーや、ビデオ伸び計のような計測手法ではこのような面的な不均一さを把握することは困難です。このように、DICの面的な情報を用いることで、実験が想定通りに実施できているかどうか詳細に検証することが可能です。一方で、チャック滑りなどは試験荷重の増加によってその状況が逐次変化していくと想定され、どのように試験体に荷重が加わっているか直接計測することは容易ではありません。次回は、この左右不均一なひずみの情報を用いて、時々刻々と変化する荷重条件を推定することを考えてみましょう。
参考文献
※1. デジタル画像相関法を用いた逐次データ同化による材料パラメータと境界条件推定, 綿引 壮真, 佐々木健吾, 計算力学講演会講演論文集2019.32 巻, 2019.
[From S. Watahiki]
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