今回は解析テーマに特化して、撹拌についてお話をします。
皆様ご存知のとおり、材料を混ぜることを「撹拌」もしくは「ミキシング」といいます。
そもそも、撹拌って何のためにするのでしょうか?
意外に思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、撹拌の目的は濃さを均一にすることだけではありません。
化学反応の促進
空気抜き
温度の均一化
などなど・・
いずれの場合も、問題になるポイントが色々あります。
どんな羽根や容器を選べばいいの?
どの程度の速さで回転させればいいの?
何秒混ぜればいいの?
などなど・・
この撹拌の問題に取り組む際、シミュレーション以前に各社お持ちのノウハウや理論がかなり重要です。
というのも、考えつくパターンを全て計算すると、とんでもない時間と労力がかかるためです。
理論やノウハウからアタリを付けていただき、細かい微調整をシミュレーションで検証する運用が一番スムーズにいくかと思います。
さて、撹拌を取り扱う際に必ず問題になることがあります。
いわゆる「スケールアップ」問題です。
場当たり的に製造現場でいきなり試すと、失敗した場合の損失がかなり大きくなります。
そのため、ビーカサイズの実験機でうまく混合するか確認し、何段階かに分けて容器サイズを上げて検証を行い、最終的に実機サイズまで持っていきます。
この容器サイズを上げていくことをスケールアップと言います。
単純なようですが、これ、意外とクセモノです。
徐々にサイズを上げても、最終的に実機で混ざらない問題が発生するのです。
なぜなら実際の現場では、テスト機と実機の羽根の形が異なったり、実機の高さがフロアの高さで強制的に決まってしまったり、相似な形状でスケールアップできない場合がほとんどなのです。
こうなると、スケールアップの際に、回転数や撹拌時間を一般的な理論式からアタリを付ける方法が取れません。
特に、羽根が複数個ある場合や、軸の位置が中央でない場合は深刻です。
あれれ、困ったな・・
というところで、原点に立ち返ってください。
まず、そもそもの目的を見直してください。
そして、その目的を満たすために、何が一番効いている要因か見定めてください。
たとえば、単純な混合・濃度の均一化をしたい場合、羽根が液体へ与える力が重要です。
この力がスケールアップ前後で保たれるように考えれば良いわけです。
(厳密には、流速が速い場合は話が変わります。)
また、液体や固体を「切りたい」のであれば、羽の先端が液体へ与えるせん断力が重要です。
この力がスケールアップ前後で保たれることを考えます。
(もちろん、釜全体の対流も同時に考慮する必要がありますが…)
スケールアップ時に保存させる値を「スケールアップの指標」と呼びます。
スケールアップの指標を算出するのに、実験では得にくい流量や乱流エネルギーなどが含まれる場合があります。
こういったパラメータは、シミュレーションから算出し、スケールアップ後の最適な回転数や撹拌時間の予測に使用します。
といったように、撹拌、特にスケールアップ問題では実験、理論、シミュレーション全てが重要です。
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