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【流体】新人DSK 洗濯物を乾かしたい

2022年06月16日

この流体コラムでは、熱流体解析ソフトSimcenter FLOEFD を使用して、洗濯物の乾き方を解析した結果を紹介します。浴室乾燥機を換気運転・乾燥運転で乾かした場合に加えて、換気運転にサーキュレータを導入した場合の3ケースを比較し、効率的に自宅で洗濯物を乾かす方法を吟味しました。

背景

4月から新社会人として初めての一人暮らしを始めた私には1つの悩みがあります。それは「洗濯物がなかなか乾かないこと」です。浴室で洗濯物を乾かしているのですが、乾き方にムラがあり、また浴室乾燥機の長時間の使用は電気代がかかるといった悩みがあります。
そこで”短時間“で、できれば”節約“しながら洗濯物を乾かしたいと考えました。

また最近、家電量販店でサーキュレータを用いた衣類乾燥の提案を見かけました。確かに効果はありそうだとは思ったのですが、どれぐらい乾くのかということを疑問に思いました。サーキュレータの効果が確かにあるとすれば、サーキュレータの運転は浴室乾燥よりも低電力で動かすことができるため、節約しながら乾かすことができると考えました。

そこで今回はSimcenter FLOEFDを用いて、まず浴室乾燥機を換気運転させた場合と乾燥運転した場合での洗濯物の乾き方を検証しました。そして、換気運転に加えて、サーキュレータで風を当てた場合に洗濯物がどれくらい乾くのか検証しました。

水膜モデル

解析では洗濯物が乾く現象を「水膜モデル」で表現しました。Simcenter FLOEFD では物体の表面上に水膜の厚みを設定することが可能です。図1のように洗濯物が濡れている状態を衣類の上に水膜が張っている状態としてモデル化しました。解析では水膜がゼロの状態を乾燥状態と定義しました。通常の洗濯物では数十μm 程度の水膜があるそうですが、衣類によって異なるそうです。今回は解析時間を短くするために水膜の厚みは5μmに設定して解析しました。
解析ではモデルの表面に設定した”水膜厚み”に注目します。




 
▲図 1. 水膜モデル

解析モデル

解析モデルは図2、図3のように作成しました。図2は浴室乾燥機が天井についており、洗濯物が干してあるモデルです。図3は図2のモデルにサーキュレータを追加したモデルです。




 

 
▲図 2. 浴室に洗濯物が干してあるモデル ▲図 3. 浴室にサーキュレータを設置したモデル


初期条件はお風呂上りにすぐに洗濯物を干した場合を想定して湿度100%の温度27℃で設定しています。また、浴室には外気をやり取りするガラリを設定し、浴室の外は1気圧、20℃で設定しました。

浴室乾燥機は図4のようなモデルになっており、流出口は150 m3/hで空気を排出、流入口は95 m3/hで温度40℃、湿度10%の乾燥した空気を供給するように設定しました。浴室乾燥機の換気運転時は流出のみ、乾燥運転時は流入・流出が行われています。換気運転時は浴室の側面に設定したガラリの隙間から外気が供給されます。




 
▲図 4. 浴室乾燥機のモデル


サーキュレータのモデルは図5のようになっています。サーキュレータ内部の紫色の面に対してファンの条件を設定することで解析しました。サーキュレータから出る風の流速は5 m/sに設定しています。

図 5. サーキュレータのモデル

▲図 5. サーキュレータのモデル


次に浴室内に設定した洗濯物のモデルについて説明します。図6のように3枚のT-shirtと2枚のタオルを配置しました。全ての洗濯物に対して水膜を設定しています。今回は結果に特徴があったT-shirt A とT-shirt Cに注目します。




 
▲図 6. 洗濯物の名称


解析結果
換気運転と乾燥運転の比較

浴室乾燥機を換気運転した場合と乾燥運転した場合で洗濯物の乾き方は図7のようになりました。乾燥運転した場合の方が、明らかに洗濯物が乾く(水膜がゼロになる)のが早いことが確認できました。




 
▲図 7. 換気運転・乾燥運転時の洗濯物の乾き方の比較


図:Tシャツ

また、2つのケースにおける空気の流れは図8、図9のようになりました。




 

 
▲図 8. 換気運転時の空気の流れ ▲図 9. 乾燥運転時の空気の流れ


さらに、T-shirt A とT-shirt Cの水膜の時間変化は図10、図11のようになりました。換気運転時はT-shirt AよりもT-shirt Cが乾きづらいことが確認できます。一方で浴室乾燥機を使用することで、2つのT-shirtが同時に乾く様子がわかります。




 

 
▲図 10. 換気運転時の水膜変化の様子 ▲図 11. 乾燥運転時の水膜変化の様子


換気運転にサーキュレータを導入した場合

次に換気運転時にサーキュレータを導入した場合と乾燥運転した場合を比較します。図12に換気運転に加えサーキュレータを導入したときの空気の流れを示します。サーキュレータから出た風がT-shirt BとT-shirt Cに当たっていることが分かります。




 
▲図 12. 換気運転にサーキュレータを導入した場合の空気の流れ


換気運転に加えてサーキュレータを導入した場合、図13の3.のように水膜は変化しました。風が当たっているT-shirt BとT-shirt-Cは特に乾く時間が早くなっていることがわかります。乾燥運転のみで乾かした場合と比較すると風が当たっている2つのT-shirt B,Cに関しては乾燥運転の時と同等の時間で乾いていることが分かります。




 
▲図 13. 換気運転にサーキュレータを導入した際の乾き方


また、換気運転に加えてサーキュレータを導入した場合のT-shirt A とT-shirt Cの水膜の時間変化は図14のようになりました。




 
▲図 14. 換気運転にサーキュレータを導入した場合の水膜変化の様子


図10のT-shirt Cの乾く時間に比べて、風が当たっている図14のT-shirt Cの方が明らかに早く乾いていることが確認できます。

まとめ

以上の3ケースについてそれぞれの洗濯物が乾く順位とすべての洗濯物が乾くまでに要する時間は表1のようになりました。換気運転にサーキュレータを導入することで470 sの時間短縮になります。




 
▲表 1. 各ケースの乾燥までにかかる時間(水膜5μmの場合)


さらに水膜の厚みを5μmで解析したこの結果を、実際の洗濯物で想定される水膜の厚みを100μmであると仮定して、乾くまでに要する時間を単純に20倍すると次のようになります。




 
▲表 2. 各ケースの乾燥までにかかる時間(水膜100μmの場合)



換気運転にサーキュレータを導入することで洗濯物が乾くまでの時間が約2時間半も短縮することができます。乾燥運転をさせた場合と比較すると1時間弱、乾燥までに時間が多くかかってしますが、乾燥運転では1200 W程度の電力を消費するのに対して、換気運転とサーキュレータの運転は合わせても50 W以下しか要しません。そのため、1時間弱乾燥時間が伸びたとしても、電力量を考慮すれば換気運転にサーキュレータを導入することで大幅に節電できるといえます。

以上のことから浴室乾燥機を換気運転させながら、サーキュレータで風を当てることで節電しながら、短時間で洗濯物を乾燥させることが可能だといえます。他にも洗濯物の配置や首振りでサーキュレータを動かした場合などで乾く時間に変化があるかもしれませんが、それはお家の浴室で実験したいと思います!!

最後まで読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m

[From DAISUKE HOSOKAWA]

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