「図面の最新版はどれですか?」 設計現場で飛び交うこの何気ない会話。もし、この確認が曖昧なままプロジェクトが進んでしまったら……。
ある大手産業用装置メーカーで実際に発生した、図面管理の不備による「損害額 約1億円」という深刻なトラブル事例をご紹介します。
COLUMN
データ管理
【データ管理】「最新版はどれ?」その確認漏れが1億円の損失に...図面管理の落とし穴
事例;図面の最新版管理
ある大手産業用装置メーカーで発生した深刻なトラブル。その原因は、図面の最新版が正しく管理されていなかったことにありました。
同社は、お得意様から20台の大型装置を受注。5台ずつ4期に分けて納入する計画でしたが、納期は非常にタイトで、長納期部品については先行発注を進める必要がありました。
設計は3D CADで行われ、2D図面とともにPDMで管理されています。しかし、購買部門への部品手配は、図面の部品票をもとに購買システムへ再入力(2重入力)する必要があり、専任の入力担当者を配置しなければならないほどの負担となっていました。
この2重入力の手間を省くため、過去の類似装置の購買用部品票をコピーし、変更点のみを修正するという運用が常態化していました。ところが、ここに大きな落とし穴が潜んでいたのです。
納期に2.5か月を要する最重要パーツが、設計図面ではすでに改定されていたにもかかわらず、購買用部品票は旧版のまま更新されずに発注されてしまいました。その結果、納入された部品は装置に組み込む段階で干渉が発生。設計部門への問い合わせで初めて、旧版図面に基づいて発注されていたことが判明しました。
このパーツは特殊材料を使用し、1個あたり数百万円。しかも20台分が並行して製作されていたため、損害額は約1億円にのぼりました。
このような事態を防ぐには、図面の部品票と購買用部品票を自動で連携させるのが理想ですが、現行システムでは容易に実現できるものではありません。だからこそ必要なのは、図面の改定を確実に検知し、購買部品票へ反映させるための仕組みです。
図面の最新版管理が徹底できていなかったことが要因で、重大な損失を招いたわけです。
3DEXPERIENCEプラットフォームで実現する最新版管理
「図面の最新版はどれ?」 そんな些細な確認漏れが、あるメーカーで1億円の損失を招きました。この悲劇を防ぐには、「人の注意」ではなく「仕組み」が必要です。そこで有効なのが、SOLIDWORKSとクラウド型設計プラットフォーム『3DEXPERIENCE』による版管理です。
版管理(リビジョン管理)とは
データ管理の履歴を版数とバージョンで管理することを版管理/リビジョン管理と言います。
版管理では製品の仕様が確定した時点(承認時)の状態を記録し、版数(リビジョン)で管理することで、「設計中」のデータと、製造現場に渡すべき「承認済み」のデータを明確に区別し、最新版の管理や編集履歴についてトレースすることが可能になります。
■ 版管理の具体例
以下は版管理の具体例です。
初版(A.1)を作成後、Bさんによってリブ形状の編集し、バージョンアップが実施されました(A.2)。
その後Aさんによって軽微な修正が加えられリビジョンAの現行形状としてA.3がリリースされています。
その後、新規リビジョンBとして軽量化を目的とした新リビジョンの設計が2026/1/1に開始されたことが確認できます(B.1)。
■ 最新版を確実にトレースする
版管理を実施することで、変更履歴を明確に管理することができます。
Ver A.1 → A.2: 設計者が形状変更や修正を行う(作業中)
Rev A (Ver A.3): 承認者が確認し、現行形状としてリリース(最新版)
Rev B (Ver B.1): 次の改良(軽量化など)に向けた新たな設計開始(作業中)
このように、「設計中のデータ」と「製造・購買に渡すべき承認済みデータ」をシステム上で明確に区別することで、「どれが最新版か分からない」という状況を防ぐことができます。
まとめ
今回ご紹介した1億円の損失事例 は、決して特殊なケースではありません。
「忙しいから」「システムが使いにくいから」という理由で、手作業による転記や、過去データのコピー運用が常態化している現場は少なくないはずです 。しかし、どれだけ熟練した担当者であっても、人間である以上ミスはゼロにはできません。今回の事例が教えてくれるのは、「図面の最新版管理」という一見基本的な業務の不徹底が、企業の利益を吹き飛ばすほどのリスクになり得るという事実です 。
トラブルを防ぐために必要なのは、現場の注意力に頼ることではなく、「誰がいつ見ても、どれが最新で正しい図面かが分かる仕組み」を作ることです 。
3DEXPERIENCEプラットフォームによる版管理なら、以下のことが実現できます。
・ 「作業中(バージョン)」と「承認済み(リビジョン)」の明確な区別: 設計途中のデータが誤って後工程に流れることを防ぎます 。
・ 変更履歴の確実なトレース: 「いつ、誰が、何を」変更したかが自動で記録され、ブラックボックス化を防ぎます
・ 他部門との正確な連携: 購買や製造部門が、常に「承認済み」の最新データに基づいて動ける環境を作ります 。
次回以降も製造業におけるデータ管理にまつわる課題と
改善例についてのコラムを掲載予定です。
ぜひお楽しみに。
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