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CAEエンジニアの応援歌 vol.8「実測が正、シミュレーションはまやかし?」

2025年05月15日

実測が正、シミュレーションはまやかし?

こんにちは、KAJITAです。メルマガを書いていたのはもう10年以上前でしょうか。

KKEさんとのお付き合いも20年になるので時系列がわからなくなってきました。

私がFlowSimulationを導入したのは2006年です。

当時は名前がFloWorksだったような気がします。

私はCAE専任というわけではありませんが、CAEは長く使っており初期の頃に比べて大きな変化を感じています。

今回はCAEな皆さんへの応援歌ということで、30年間の進化とCAEへの想いを述べたいと思います。

学生時代

大学4年生のとき(20世紀)に研究室配属になりFORTRANで液体の流れを計算するプログラムをつくりました(もちろん2次元)。

といってもいきなり自分でつくったわけではなく先輩のコードの変更でした。本当に自分でつくったのは修士になってからです。

研究室では当時としては高価なWSを使っていたと思いますが、メモリが非常に少なくHDも何GBだったか覚えていません(TBではないです)。

「目的の流れを計算するにはメモリが1GB以上必要になり現実的ではないので、このように工夫した。」と卒業研究の発表で話したことを覚えています。

今だったら、そのまま計算すればいいでしょう、と言われます。

2000年代

卒業後はしばらくCAEから離れていましたが、今の職場に転職して再び触ることになりました。

大学の研究室では自分でプログラムを組んでいましたが、知らない間にマウスを使って操作するのが当たり前になっていました。それでもまだ2GBの壁(OSは32bitでした)がありました。

2000年代はモデルの簡易化がテーマになっていました。

今でも全てを詳細に再現するわけではなく簡易化はしますが、20年前は簡易化しないとそもそも計算ができないことがよくありました。

今では計算時間を我慢すれば結果がでることが多くなったと感じます。

計算速度とメモリ容量は飛躍的に大きくなりました。


CAEとは関係ありませんが、私が高校生のときに放映していたスーパー戦隊でスーパーコンピュータを使って戦闘用ロボットを設計するシーンがあり、「3次元の設計図が自由自在に動く。すごい!」とレッドとブルーが会話をしていました。

今のスーパー戦隊はわかりませんが、当時は子ども向け番組にも科学技術への憧れが反映されていたのだと思います。現代のコンピュータは当時の憧れを超えています。

私が当時遊んでいたPCはメインメモリが64kBでした。

コンピュータの進化だけでなく、シミュレーションソフトも進化しました。

毎年バージョンアップを重ねて、今後は重箱の隅をつつくような機能アップしか残っていないのではないかといらぬ心配をしてしまいます。

数年前に驚いたのはFlowSimulationでVOF法を使ったときのことです。

VOF法そのものは知っていましたが、自分でつくったプログラムはうまく回らず、市販のソフトでも設定が非常に複雑で苦労した経験があります。

それが数回のクリックで水を掻きあげる計算ができてしまったのです。

一週間ぐらいじっくりと取り組むつもりで始めたのが30分ぐらいでモデルができてしまい、どこか間違えていないか心配になるほどでした。

もちろん全てが簡単になるわけではありませんが、多機能化だけでなく、ユーザーインターフェースも洗練されてきました。

何をいまさらと思われるかもしれませんが、ハードとソフトの進化によりいろいろな現象を速く簡単に計算できるようになったことはCAEを扱う方たちには大きな武器になると思います。

10年前のシミュレーションソフトを起動することは難しいかもしれませんが、たとえばWindwos7を使ってみると、こんなこともできなかったの?と古さを感じます。

普段何気なくやっていることが、実はごく最近できるようになったばかりということはよくあります。

短い期間に大きく進化させてくれた開発者の皆さんに感謝します。

そう思うと、結果がうまく出ないこともあるCAEにも愛着がわいてきませんか?

実験とCAE

話は変わりまして、私はいろいろな分野の方から測定、シミュレーション、不具合対策その他諸々の相談を受けています。

CAE専任者、設計者、研究者など様々な立場の方とお会いします。

その中で実測とシミュレーションが合わないという相談が多くあります。

ここでよく感じるのですが、実測が正、シミュレーションはまやかしだ、と考えている方が多くみえます。

実測が正というのは、正しく実験、測定していることが前提です。これがなかなか難しい。

最近の私の失敗はサーモグラフィでした。非常に複雑な実験だったので、最後のサーモグラフィの操作で環境反射補正を忘れていました。

更に近接拡大レンズを使うときにピント調整を間違えていて(それでも画面にはピントが合った熱画像がでてきてしまうのがやっかい)温度も長さも違う結果になっていました。

本当に単純なミスですが、考えることが多かったり実験が複雑だとやってしまうんですよね。

そして、それらしい画像が出てくるからなかなか気づかない。

実は自分では気づかずに、指摘されてわかりました。

また、測定することによって環境が変わってしまい、本来とは異なる結果になってしまうことがあります。

オシロスコープで波形を調べていたときに、設計とは大きく異なる値がでて悩んでいたことがあります。(けっこうお金をかけて基板をつくったので顔面蒼白)

実はプローブのインピーダンスが悪さをしていて、実際にはちゃんと動いていました

熱電対による温度測定でも接続することによって放熱してしまうということがあります。

この場合は試験でOK、実際に動かすとNGになる可能性があるので危険です。

このように、新しく取り組む実験ではいろいろやってしまいます。本当に実測が正なのか、しっかり確認しないといけませんね。

かといってCAEは常に正しいかというと、もちろんそんなことはないです。

インプットする値が正しいか、計算モデルの選択は適切か、その他考えないといけません。

物理的にあり得ない現象でも数値計算はできてしまいます。たとえば薄板で完璧な断熱材という条件でも計算はできます。

しかもこの条件は比較的収束しやすいので困ってしまいます。無理な圧力の境界条件だと比較的発散することが多いので、間違った答がでてこないという意味では都合がいいのですが。(収束、発散のしやすさは個人的な経験であり、状況により異なると思います)

CAEな人々

実測もシミュレーションも自分でできる環境はあまりないかもしれませんが、そういうときは周りを見渡して、それでもいなければ社外に目を向けて。友達の輪が広がるかもしれません。

最近思ったのですが、CAEな皆さんは人に接する機会(社内、社外にかかわらず)が多いのではないでしょうか?

CAEの多機能化もあって、様々な現象を扱えるようになってきました。

そうすると自然に多くの課題に関わることが増えてきます。

他部署の人、あるいは社外の人からこういったことができないか、という相談が多くないですか?

自信がないけどとりあえずやってみる、を繰り返しているとできることが増えていく、CAEを積極的に使っている人をみるとそのようい感じます。

幸いCAEは失敗したとしても、火事も事故も起こりませんし、ゴミもでません。

発散したファイルは簡単に削除できます(今後のために保存しておく?)。

ライセンス料はかかるかもしれませんが、リカバリできる可能性があります。
リアルな失敗作品はなかなか再利用できません。捨て方も悩みます。

メッセージ

最後に、私も老後を気にする歳になりました。

あまり共感されないかもしれませんが、80歳、90歳、100歳になってもシミュレーションは触っていたいと思います。

感電や火災が怖いので実験はいつか引退してもいいですが、計算がうまく収束する快感は何歳になっても味わっていたい。

シミュレーションが手段ではなく目的になっていますが、おじいさんおばあさんになってもWeb会議(あるいはリアルで)でCAE談義ができる老後を迎えたいです。

老後の話は極端ですが、収束する快感、予定通りのきれいなベクトル図、コンター図がでてきたときのうれしさを知り、味わうことができたら、困難に負けず元気に進んでいけます。

そんなことを思いながらCAEを扱う皆さんを応援します。


[ 2025/5/15 from KAJITA ]

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