【構造】稼働中の施設における振動・変位計測にも有効な画像計測技術のご紹介
はじめに
昨年から本コラムでも数回にわたりご紹介している、対象の変位やひずみを非接触・3次元・面的に取得可能な、デジタル画像相関法(DIC)ソリューション。これまでのコラムや事例紹介(https://dic.kke.co.jp/case/)では、対象にランダムなパターン模様を塗布して行う面的な計測技術やその応用例をご紹介致しました。
デジタル画像相関法(DIC)とは
しかし、様々な制約から対象への塗装が難しい場合もあります。そのような際でも、マーカーシールを任意の場所に貼り付けるだけで、その変位量を3次元で取得可能な画像計測技術「ポイント計測」がお役にたてるかもしれません。
ポイント計測の特徴
ポイント計測は稼働中の施設や製品の計測において、撮影範囲内における任意点の変位を、三次元かつ非接触で取得することが可能です。センサの数、貼り付け位置や軸の検討が必要無い為、試験系の評価、問題箇所の探索やその原因究明などにも有用です。さらに、高速度カメラを用いることで高速度現象や振動計測にも適用が可能です。
とりわけ、撮影範囲内の結果を動画に重ねて確認することができるため、結果がだれの目にも一目瞭然。社内外に対して訴求力の高い結果が得られる点がご好評をいただいております。
デジタル画像相関法(DIC) とポイント計測
ポイント計測の一例
ポイント計測によるエアーコンプレッサーの振動評価
今回は弊社所有のエアーコンプレッサーを設備や製品に見立て、ポイント計測による振動部位の特定や改良後の評価の流れをご紹介致します。
計測対象
計測対象は弊社所有の一般的な塗装用レシプロコンプレッサーです。移動がしやすいよう、脚の一方に車輪がついています。見た目の印象ほど加圧時の振動は大きくなく,現状で周辺の機材等に悪影響は出ていないのですが、さらなる性能向上を目指して制振化の余地を探ることにしましょう。今回は比較的すぐに取り組める内容として、車輪の有無で振動量が変化するかを確認致します。
計測概要
対象への準備として、振動源であるピストン部分やタンク、脚部分やメーターなどにポイントシールを貼り付けました。このシールは撮影範囲やカメラ解像度に応じて適切なサイズを選定しています。
そこへ短いシャッタースピードでも十分な光を取り込めるように強めの照明を当て、校正済みの高速度ステレオカメラで加圧中の対象を連続撮影します。撮影間隔は 6400 fpsに設定しています。
画像解析の結果
画像解析の結果、ポイントシールを貼り付けた全点で三次元的な変位量が得られました。煩い図とはなってしまいますが、下図に振動中のある時点における三軸方向それぞれの変位量、さらに縦方向(Y軸)のダイヤグラムを示しました。同タイミングのデータを一般的な貼り付け型の振動センサで得ようとした場合、この点数×3軸方向のセンサや,それらを実際の位置と対応させて分析する時間が必要となりますが、画像計測であればこのデータ量を一度の計測かつ非接触で取得することができます。
ある時点の 三軸方向それぞれの変位量(左図)、縦軸方向の変位量波形(右図)
さらに、得られたデータを用いてFFT解析を行い、任意波形の振幅を部位ごとに評価しました。結果から、コンプレッサーの車輪を外すことで接地条件が変わり、タンク部分の振幅が減少することが明らかになりました。しかし、一次モード以外のスペクトルが増加している点や高周波成分が増えている点など、議論の必要がありそうです。このように、ポイント計測を用いることで、対象の部位ごとに振動モード形を比較して課題や改良方法を検討することができます。
現在、今回の計測を受けて、振動の発生部位であるシリンダーとタンクを固定する防振ゴム の素材を変えた再計測を検討しております。
こちらも機会があればコラムや事例ページなどで改めてご紹介させていただきます!
脚の車輪の有無による部位ごとのFFT解析結果
画像計測の特徴とできること
構造計画研究所ではDICやポイント計測を用いた受託サービスと計測用システムの販売を行っております。材料試験から高速度な衝突試験まで、条件に応じて設備を選定し対応いたしますので、ぜひ、「実験とCAEが合わない」「加速度ピックアップやひずみゲージでうまくデータを取れない」「DICを使ってみたい」といったお悩み・ご要望がございましたらお気軽にお問い合わせください。材料モデル同定から試験分析、CAE比較、製品PRと様々な場面でご活用いただけるかと存じます。
お読みいただきありがとうございました。
今後も、画像計測の技術情報やどうお役立ていただけるかをSBDメルマガやコラムでお届けできればと思います。
[From G. Machida]