シミュレーションを導入する際に陥りがちな考え方や、それを避けてシミュレーションを有効に活用するためのコツについて説明します。
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技術コラム
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シミュレーションを上手に活用するためのポイント(熱流体解析)
導入初期のつまづきの第1歩 ~3大要因~
①大規模・複雑なモデルでいきなり解析
大規模または複雑な実際のモデルの場合、その詳細形状での現象を再現しようとすると、メッシュサイズをかなり小さくする必要があり、現実的な時間で解析できない可能性があります。その場合検討したい項目にあわせて必要な領域に限定して解析する必要があります。
②とりあえず解析してみる
目的を定めず解析をしてしまうと、最終的にどのパラメータが結果に影響しているのかがわからなくなり、いろんな解析パラメータのパラメータスタディに陥ってしまう場合があります。解析前には評価項目を絞って、解析する必要があります。そうすれば、解析結果と実験結果に乖離がある場合、その原因と対策がわかりやすくなります。また、興味あるテーマがいくつかある場合は、まずは一つのテーマに注力し、解析の流れやポイントをつかんだあとに別のテーマに移行するとスムーズに行きやすくなる場合があります。
③実験値との比較にこだわる
シミュレーションと実験双方に誤差が存在するため、実現象の場合完全に一致させることは、かなり難しいです。シミュレーションには数値計算誤差やモデル化誤差、実験には測定誤差などが存在します。その中でもモデル化誤差は多くの場合、重要になってきます。実際の現象には複雑な物理が絡み合っていたり、ランダム性が含まれているため、解析の目的に合わせてうまくモデル化する必要があります。
以下でどのようにこれらを避けて、うまくシミュレーションを活用すればよいのか具体的に説明いたします。
評価方法
■相対評価
〇相対評価を行う際のポイント
・着眼点を絞り込みます。項目を絞って傾向を把握します。
・効率を重視し、数多くのモデルや条件の比較、傾向を把握してみます。
・相対評価の具体的事例
■絶対評価
〇絶対評価について
・製品の品質や性能を確認するために、特定の基準に基づいて得られた値を絶対的に評価する方法です。
製品開発の判断基準に用いる値となるため高い精度が求められます。
〇絶対評価をおこなう際の問題
・詳細なモデルでの解析が必要なため計算時間がかかります。
・正確な物性値や入力条件が必要です。
・複雑形状を解析用に簡略化する必要があります。その際に設計意図を汲んだモデル簡略化が必要です。
・考慮する要素が多いので、どのパラメータが効いているか判断しにくくなります。
誤差要因
実験とシミュレーション結果に乖離があるときに確認する点は以下です。
・シミュレーション側の問題
・実験側の問題
■誤差要因の具体例
〇実験値との比較
・実験、解析ともに多くの誤差要因を含みます。
・実験と解析結果を比較する前に誤差の背景を理解する必要があります。
・解析結果の誤差の要因として大きいのがモデル化誤差です。
・特に、熱流体解析では不明な物性や不確かな入力値が多く、精度に大きな影響を与えます。
■よくある誤差の要因
〇測定している箇所が異なる
例えば、バルブやダクトの解析などで、実験では圧力計により1点の圧力を測定しているのに対し、
解析では面平均の圧力を測定してまっている。
〇実験モデルと解析モデルが異なる
バルブ、ダクトに関するJISの実験規格では配管の長さを延長して流量や圧力を計ります。
解析モデルも同様に配管の長さを延長する必要があります。
■解析に関する誤差の原因
〇入力値、物性値の誤差
流体の物性は温度によって変わります。適用温度における流体の物性値を使用してください。
体積流量、質量流量に注意してください。体積流量は温度や圧力によって変化します。
〇メッシュの誤差
〇収束判定
速度に比べ、圧力は遅く収束します。速度が収束した時点で計算を終了すると、圧力に誤差が生じます。
〇乱流モデルの限界
k-εモデルは基礎方程式を平均化しているため、メッシュ分割による精度の向上に限界があります。
各設計工程におけるモデル化
設計の各ステージにおいて解析を実施する目的は異なります。目的が異なるので、解析のアプローチも異なります。
設計の初期段階 ⇒ 新しい設計アイデアの検証
【解析をおこなう上でのポイント】
・絶対精度を求めるのではなく、設計案の比較検討をおこなう(相対比較)。
・精度の追及に時間を割くのではなく、できるだけ多くの設計案を試してみる。
詳細設計後の量産段階 ⇒ 性能、安全性の検証
【解析をおこなう上でのポイント】
・流れの経路を確保したモデルの簡略化を行う必要がある(設計意図を考慮した簡略化)。
・実験値と合わせて評価をおこなう。簡略化により思わぬ結果が出ることも可能性あり。
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