CASE
HEEDSを用いたIGBT用水冷ヒートシンクの設計最適化
機能説明と事例の概要
Simcenter FLOEFDのパラメータスタディには、デフォルトの”目標最適化”機能がありますが、設計変数と目標値(目標関数)は1つしか設定できません。また、デフォルトの”実験計画と最適化”機能では、設計変数と目標値を複数設定できますが、設計空間の探査はランダムなため応答曲面が抽出されるのみであり、最適解を得られるとは限りません。
一方、マルチパラメータ最適化オプション(HEEDSオプション)は、設計変数と目標値を複数設定でき、目標間のトレードオフを把握することもできます。また、探査にはSHERPA と呼ばれるアルゴリズムを使用しており、局所/大域のハイブリッド探査を行います。これにより、優れた探査結果(最適解)を提示することができます。
今回はFLOEFDのHEEDSオプションを用い、複数のパワーデバイス(IGBT)を有するコントロールユニットにおけるヒートシンクの設計最適化を行いました。目標値として、デバイスの素子温度、流路の圧力損失、ヒートシンクの質量を最小化するように、設計変数であるヒートシンクのフィンの本数(間隔)、フィンの寸法、冷却水の流量を最適化しました。また、HEEDSの結果評価機能を用い、設計変数間の関係を視覚的に把握しました。
解析条件
● 解析モデル
下記に解析モデルの概要を示します。
● 解析条件
表1に解析条件を示します。
表2に最適化の条件を示します。
Simcenter FLOEFDはCADに完全統合された熱流体解析ソフトであるため、CADソフトと親和性の高い製品になります。CAD上の寸法をクリックするのみで、最適化における設計変数の設定が可能です。今回使用するヒートシンクは1つのフィンをパターンフィーチャーで複製する形で作成されています。パターンフィーチャーの寸法を選択して設計変数として使用します。
解析結果
表3に、探査初期の設計ポイントと最適解の設計ポイントにおける設計変数、目標値の結果を示します。また、図4に最適解の設計ポイントにおける流速の断面プロットを示します。なお、本モデルの計算時間は全140ポイントの計算で35分でした(1ポイントあたり8コア使用で4ポイント同時実行)。
続いて、HEEDSの結果評価機能を用い、これら設計変数間の関係を視覚的に把握します。
図5に全設計ポイントにおける設計変数の傾向を示します。また、図6に各計算回数(設計ポイント)における素子温度のプロットを示します。実行可能解は制約条件(T≦125)を満たす解、実行不可能解は制約条件を満たさない解です。
図5からは、目標を達成する設計変数の傾向を把握できます。青いラインで示す実行可能解の傾向から、フィンの間隔(D1)は狭く、フィンの高さ(D3)は低くという組み合わせにおいて良好な素子温度が得られることが分かります。
図6からは最適化計算の進行度を把握できます。本解析の最適化計算では120回目の計算が最適解となりました。その後の計算では実行可能解の探査が多い一方で実行不可能解も探査されており、最適解周辺を探査しつつも、大域的な探査を行ったことも分かります。
図7の結果からはパレートフロント(赤の破線)を確認できます。素子温度と質量という2つの相反するパラメータ間のトレードオフを把握できます。
まとめ
今回の解析事例では、FLOEFDのHEEDSオプションを用い、複数のパワーデバイス(IGBT)を有するコントロールユニットにおけるヒートシンクの設計最適化を行いました。
▼▼以下の資料請求から、HEEDS機能の詳細や本事例の解説をご覧いただけます。▼▼
素子温度、ヒートシンク質量、冷却液の圧力損失を目標値として、ヒートシンクのフィン形状の寸法を最適化することができました。最適化計算の結果として、素子の温度上昇を10%低減しつつ、ヒートシンク質量を17%削減することができました。また、HEEDSの結果評価機能を用い、設計変数間の関係を視覚的に把握することができました。
備考
※HEEDSの最適化手法について
HEEDSにおける最適化手法は以下の2種類を利用できます。
解析タイプ | 内部流れ、熱伝導考慮 |
---|---|
流体 | 水 |
流入温度 | 65℃ |
素子総発熱量 | 500W |
使用ソフト | Simcenter FLOEFD HEEDSオプション |
---|---|
メッシュ数 | 8万セル |
計算時間 | 全140回の計算で35分(1ポイントあたり8コア使用で 4ポイント同時実行) |
CPU | Intel(R) Xeon(R) Platinum 8260 CPU @ 2.40GHz |
目標値 | ・T : デバイスの素子温度を最小化 ・dP : 流体(冷却水)の圧力損失を最小化 ・m : フィンの質量を最小化 |
---|---|
制約条件 | ・素子温度は125 ℃以下 |
設計変数 | ・D1 : フィンの本数(間隔) (値の範囲:3~10 ㎜) ・D2 :フィンの角度(値の範囲:5~45 ℃) ・D3 :フィンの高さ(値の範囲:1~7㎜) ・Q : 冷却水の流量(値の範囲:1~5 L/min) |
計算の最大数 | 140 |
最適化手法 | SHERPA-重み付け合計 ※ |
最適化手法 | |
---|---|
SHERPA-重み付け合計 | すべての目的関数を足し合わせて一つの目的関数とします。 • 目的関数が互いに相反するのではなく、補足しあう場合に使用します。 • 各目的関数の相対的な重要度(重み)が定義できる場合に使用します。 • 1個の最適化された解を算出します。 |
SHERPA-パレートフロント | すべての目的関数を独立のものとして取り扱い、それらの間のトレードオフを探します。 • 目的関数が互いに競合(相反)する場合に使用します。 • 目的関数の間のトレードオフが必要不可欠な場合に使用します。 • 最適設計値群から構成されるパレートフロントを導きます。 |
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